DLPとLCDの両テクノロジーは、類似していると思われることが多々ありますが、実際には大きく異なるテクノロジーです。
DLPとLCDの両テクノロジーは、類似していると思われることが多々ありますが、実際には大きく異なるテクノロジーです。高性能材料の造形を検討していて、精度と部品の品質が必要な場合は特に、これらは互いに代替可能だという考えに陥らないでください。以下に、その理由をいくつか示します。
3Dプリンティングの生産への活用が進むにつれて、生産グレードの部品を造形するためのテクノロジーが次々に出てきています。こうしたテクノロジーのうち、DLP(デジタル光造形方式)とLCD(液晶ディスプレイ、マスクドステレオリソグラフィー(mSLA)とも呼ばれます)が最も先を進んでいます。どちらもバットに入れたフォトポリマー樹脂を使用し、光を投影して層ごとに部品を作成するもので、どちらも層全体を一度に投影することで造形にかかる時間を短縮しています。LCDテクノロジーの提供企業であるNexa3D、Photocentricや、AnycubicやPhrozenなどのローエンドプリンタなどは、LCDテクノロジーをDLPと比較していますが、それはリンゴとオレンジを比較しているようなものです。実際のところ、これら2つの技術には理解しておくべき重要な違いがいくつかあります。その違いが、プリンタの可能性、つまり問題なく造形できる材料と形状を本質的に表しているためです。DLPとLCD、その違いとプリンタの機能への影響を見てみましょう。
DLPは、デジタルプロジェクターを使用して樹脂に光を投影し、高精度で詳細な造形物を作成します。LCDは、マスキングスクリーンを通して投影される一連のLEDを使用します。これら複数のUV光源は、わずかながらも強度の変化が避けられないため、一部のスクリーンでピクセル間に光のにじみが生じて均一性が落ち、その結果として層の硬化の精度が低下します。UV光はまた、液晶の有機材料の質を短期間で一様に低下させるため、時間の経過とともに精度が低下します。
光の投影方法が異なると、部品の硬化も異なってきます。LCDスクリーンがエネルギーの大半(最大90%)を吸収するため、LCDテクノロジーは多くの場合、DLPよりも放射照度(単位面積あたりのエネルギー量)が低くなっています(LCDパネルの急激な劣化を回避するため)。造形において硬化度が低い部品は、システム内で硬化度が高い部品よりも硬化後の機械特性が劣ります。部品が弱いままでは、特に張出し、ブリッジ構造、アイランド形状、大きな断面(大型部品)に関して、造形中の強度と安定性を高めるために、より多くのサポートが必要になる場合があります。また、損傷を防ぐために、部品をLCDプリンタから取り外す際により注意が必要です。
DLPライトエンジンの中核は、Texas Instrumentsのデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)チップであり、その解像度は最大4Kです。投影面積が大きいほど、投影されるピクセルも大きくなります(部品のXY解像度が低くなります)。LCDスクリーンはサイズをより大きくできるため、LCDテクノロジーはより大きな対象物の造形に適しています。
LCDパネルが安価を目指して製造されている(消耗品が必要)一方で、DMDチップの製造には非常に厳しい許容誤差が設定されています。許容誤差が厳しいため、再現性がより高くなっています。DLP造形は、高い信頼性で再現でき、長期にわたって一貫した結果が得られるため、最終用途の生産に人気の選択肢となっています。要件がそれほど厳しくない場合は、LCDで安価に代替できます。
LCDテクノロジーは、波長が高いほどLCDパネルの劣化が加速するため、ライトエンジンの波長が405nmに制限されています。DLPテクノロジーには385nmの光源が組み込まれています。ほとんどの樹脂は反応度のピークが400nm未満であるため、DLPはより幅広い材料、特に高性能樹脂を利用できます。波長の違いは、樹脂の硬化、部品の品質、機械特性にも影響します。405nmでは、部品に与えられるエネルギー量が同じでも硬化の効率が低く、光はより深く浸透し、その時点の造形層を超えてエネルギーが分散します。385nmでは、UV光が各層に継続的に集中し、造形がより正確に行われます。一方で、405nmではスルー硬化の影響をはるかに受けやすくなります。つまり、硬化で部品の形状に裏抜けが出たり、硬化する樹脂が多過ぎたり、複雑な外観の精度が損なわれたりする可能性が高まります。405nmでの造形は効率が波長のわずかな変動に大きく影響されますが、385nmではより安定した有効性が認められます。
LCDテクノロジーは通常、DLPテクノロジーよりも安価です。LCDプリンタは設計がよりシンプルで、高価なコンポーネントが少なくて済みます。DLPプリンタで使用されるデジタルプロジェクターは、プリンタの全体的なコストの上乗せとなりうるハイエンドコンポーネントであり、安価な光学装置では吸収される385nm UV光を使用するために必要な光学装置です。そのため、LCDプリンタは予算に限りがある場合により適しています。
UV光はLCDプリンタのスクリーンを急速に劣化させるため、頻繁に交換する必要があります。そのため、スクリーンは消耗品であり、LCDプリンタの全体的な運用コストの増大要因となります。DLPプリンタは初期コストが高くつきますが、運用コストは低く抑えられます。さまざまなテクノロジーのコストを比較するときは、プリンタの購入価格だけでなく、総所有コストも計算するようにしましょう。
最後に、LCDプリンタとDLPプリンタはどちらも、特定の部品や材料を造形できます。非常に特殊な材料を使用した具体的な設計の造形について詳しく調べ始めると、再現性や一定の品質、高精度を必要とするプロジェクトの場合、LCDではそうした要件を満たそうとする際に問題が生じます。では、分岐点はどこにあるのでしょうか。その答えは非常に複雑で、細部の状況によって異なります。そこには落とし穴があると言われています。DLPとLCDに関するさらなる詳細については、このブログを今後もチェックしてください。
DLPテクノロジーの詳細と、このテクノロジーがもたらすものをご確認ください。