歯科ラボラトリーを率いるJosef Schweigerは、Stratasys Polyjet技術を用いたフルセラミック修復物の製作に3Dプリントされた着色モデルを応用した2022年の報告書など、50以上の国際的な論文と300以上の国内論文を執筆しています。20年以上前から積層造形に興味を持っていたシュヴァイガーは、認定歯科技工士(CDT)としてセラミックスやインプラント修復に力を注ぎ、1999年にミュンヘンのLMU大学病院の歯科研究所の責任者に就任しました。
Schweiger氏がストラタシスの技術を使い始めたのは、2013年にLMUの自身のチームがGerhard Kräutner氏(工学修士)の協力を得て、マルチマテリアル対応の3Dプリンタを使用して初めて多層歯を製作したときでした。
Schweiger氏によると、現在、新しい3Shapeカラーワークフローでは、口腔内3Dスキャナーで個々のポイントの形状関連の色情報を記録できるため、外観の美しい自然に見える歯科用修復物を製作できる可能性が非常に高くなっているとのことです。
「カラーモデルは、顎の形状に関する3次元情報だけでなく、口腔内の色彩情報もあわせて歯科技工士に提供しすることができます。」とSchweiger氏は続けます。「石膏モデルを使用した従来のアナログな物理的な印象では製作することができない、まさに『キラーアプリケーション』です。」
アナログの顎の印象に流し込むことによって製作される従来の石膏モデルは、色情報を伝えることができません。色はメーカーによって指定されているため、歯肉領域を含む口腔内の他の状態とは何の関連性もないとSchweiger氏は言います。また、患者の口の中の印象を取ることから始まる従来のアナログなワークフローでは、3Dプリンタによる制作プロセスと比較して、ミスをする可能性がいくつかあることも指摘しました。
「印象が正しく形成されていない部分や、気泡や引きつれが見られる場合は、印象をやり直す必要があります」とSchweigerは述べています。「これは患者にとって不快である上、印象を繰り返し取るには時間とコストがかかります。物理的な印象を複数回取ることは珍しくありません。」
Schweiger氏とチームメンバーは、クラウン(被せ物)、インレー、オンレー、義歯、ブリッジなど、色が重要になる修復物を製作する際に、3ShapeカラーワークフローとストラタシスのPolyJetプリンタを使用して、本来の色のリアルな3Dモデルを製作しています。このワークフローでは、患者の口腔内のあらゆる部分をスキャンして取り込むことができます。
「3Shapeカラーワークフローは、歯科技工所と患者の双方にこれまでにない新しい付加価値を与えてくれます。」とSchweiger氏は言います。「歯科修復物は、口腔内に自然に溶け込むように、患者さんの実際の歯に合った色であることが重要です。患者は、いかにも "作り物 "の歯を好まないため、歯科医師や歯科技工士は歯の修復に精度の高い色を作る必要があります。3Dプリンタによって製作されたカラーモデルは、自然な仕上がりの歯科用修復物の実現に、かつてないほどの可能性をもたらしています。」
デジタル歯科における「色」の将来的な価値
Schweiger氏によると、歯や歯肉の色に関して、まるで写真のようにリアルな情報をより簡単に伝達できるようになれば、歯科用修復物の改善点をより多く検討できるようになるということです。
「将来的には、口腔内光学スキャン技術によって、歯質領域やエナメル質外表面などの歯の層を3次元的に記録し、歯科修復物の多層化、3Dプリンタによる制作のためのデータを提供できるようになるでしょう」とSchweiger氏は言います。「審美性の高いクラウン(被せ物)やブリッジの製作に加え、総入れ歯や部分入れ歯の分野でも優れたソリューションが可能になります。」
歯科用3Dプリンタモデルのシームレスなカラーワークフロー
ストラタシスは、歯科業界向けの3DスキャナーとCAD/CAMソフトウェアソリューションの開発および製造で市場をリードする3Shapeと提携して、歯科用モデルの新しいエンドツーエンドのカラーワークフローを開発しました。この新しいインターフェイスとPolyJetプリンタの技術力によって、口腔内スキャンから歯、残根、歯肉の色合いを正確に再現することで、患者の歯と修復物の色を簡単に一致させることができます。
手のかからないエンドツーエンドのソリューション:スキャンデータを歯科技工所へ送ったら、受け取った担当者はプリンタでカラーモデルを自動的に製作することができます。プリンタでの作業にさらに時間を費やす必要はありません。
患者固有のモデル:この新しいワークフローは、口腔内スキャン画像と色を自動的に一致させ、最もリアルで実際の患者に近いモデルを製作します。
コミュニケーションの向上:カラーモデルにより、歯科技工所、歯科医師、患者さんと間のコミュニケーションを円滑にし、歯科技工士がクラウン(被せ物)やブリッジなどの審美性の高い修復物をより簡単に美しく仕上げることができます。